ある日、仕事が終わって七海がスマートフォンを確認すると彼女から切羽詰まったメッセージが入っていた。仕事が終わったらすぐにうちに来て欲しいとだけ書いてあり、七海は何事かと慌てて彼女の住むアパートへと向かう。ドアの前に着いて呼び鈴を押すと室内からドタバタと勢いよく走ってくる音が聞こえ、それから七海の心配はなんだったのかと思うほど目を輝かせた彼女が飛び出して来た。
「すっごいもの手に入れちゃったんです!」
「一体何なんですか。心配して急いで来たのに」
興奮気味に話す彼女に早く早くと手を引かれ室内に入ると、そこはいつも通りで特に変わった様子は無い。それでも彼女の瞳は期待と喜びを浮かべて輝き続けていて何かとてもいい事があったのではないかと予想する。七海の手を引っ張ってベッドの方へと連れて行った彼女は綺麗に整えられた掛け布団の上にある大きな紙袋を指差した。それから堂々と胸を張って開けてみろという。七海は訝し気な表情で彼女を見るが、彼女は意に介すことなく七海を急かした。仕方なく紙袋の中身を取り出すと、そこには街でたまに見かける、とある職業の制服が入っていた。
「警察官の制服……、ですか」
「そうです! 七海さんこれ着てください!」
「なぜこんなものがここに。そしてなぜ私が着る必要があるんですか」
「これ着て、コスプレエッチしましょう」
「ちょっと待って。あなたが何を言っているのかわからない」
「いやだからこれ着てコスプ――」
「そうではなく、これはどこで手に入れたものですか。場合によっては犯罪では」
七海が彼女をじっとりと睨みつけると、彼女はむっとして反論した。なんでも週末に派出所へ出向く仕事があるらしく、そのために制服を借りているのだという。相棒になるはずの男性術師の制服と入れ違いになってしまい、彼女の手元には男性用の警察官の制服があるのだそうだ。それから彼女は得意げにベッドの下の引き出しから手錠を取り出した。
「これはオモチャなんですけどね。七海さん絶対似合いますよ。着てください」
コスプレエッチなどと唐突に言っておきながら彼女は嬉しそうに笑っている。楽しくてたまらないと顔に書いてあるようだった。そんな彼女とは対照的に七海は彼女の呑気さに心底呆れていた。
「ちょっと理解が追い付かない。それにその服、週末別の人間が使うのに私が着ていいわけないでしょうが」
大きなため息を吐いて彼女をちらりと見るが嬉しそうに笑っているだけだった。
「洗えばバレません」
「そういう問題では……」
「やるんですか、やらないんですか」
彼女は七海の方へ一歩また一歩と迫り答えを促した。
「……仕方ないですね」
「やるんだー!」
大きな口を開けてアハハと笑う彼女に七海は呆れ返っていたが、結局はその提案に乗るので興味がないわけでは無いのだろう。あくまでも渋々彼女に付き合ってやるというスタンスは崩さず、もたもたしながら制服を着用し始める。真っ新な服はしっかりとした折り目がついておりいかにもおろしたてという感じがして少々不格好だったが、それでも七海が着るとどうにも似合ってしまい格好いいのだから不思議だ。彼女は惚けながら着替えている姿を見ていると、帽子を被りベルトを締めながら七海が言う。
「人にこんな格好させておいて、あなたはまさかその部屋着のままのつもりですか」
「えー、何着たらいいんでしょう」
「仕事中に着ている服があるじゃないですか」
そう言って七海はクローゼットを指さした。仕事で着ているものといえば、最近はジャージとTシャツなのでセクシーさに欠ける。
「えっと、どういうシチュエーションなんですか」
彼女が腕を組みながら悩んでいると、七海はわざとらしい大きなため息をつき額に手を当てた。
「人にコスプレを提案するんだったら何か考えておいてください」
「私はただ、七海さんが着たらカッコいいだろうなって思っただけなんです」
照れることなく彼女は真剣な表情で七海に言った。事実、様になっている。
「それは嬉しいですが。そうですね……。では酔って鍵を無くしたあなたを警察官である私が助け、自宅まで送り届けたが誘惑されて事に及んでしまう。真面目な警察官と淫乱女教師というのはどうでしょう」
なんだかどこかで聞いたことがあるような話だった。なぜか責められているような気さえする。彼女は不服そうな表情を浮かべて七海を見た。
「……ちょっと、そのシチュエーションなんだか耳が痛いんですけど。しかも七海さんは真面目なのに私は淫乱なんですか? 不公平です」
少し責めるような顔をしてじっと見続けるが、そんなものは意に介さず七海は手錠をホルスターに仕舞いベルトに装着した。
「気のせいでしょう。さあ始めますよ。外に出たら怪しまれるので便宜上玄関に入ったところからスタートします」
「七海さん、ノリノリだ。ちょっと待ってください。淫乱女教師っぽく、髪はきっちり纏めて眼鏡もかけます」
彼女はクローゼットを全開にするといい顔を作って振り返り親指を立てた。
「あなたの探求心旺盛なところ嫌いじゃないです」
「お酒も飲んできます!」
「……早くしてください」
彼女は持っているスーツの中で一番丈の短いスカートを選ぶとさっさと着替えて洗面所で髪を整え、どこからともなく出してきた赤いフレームの眼鏡をかけた。そして冷蔵庫から瓶入りのカクテルを出し一気に飲んで七海の元へと走る。玄関で七海は革靴を履いて扉にもたれて待っていた。彼女は七海の目の前でぐるりと回って見せ、衣装とセットへの意見を求める。
「こんな感じでどうですか」
「ブラウスのボタンを二つくらい開けては」
言う通りにボタンを開けて胸元を露出させると七海は「よろしい」と言って彼女の肩を抱いて身体を支えた。
「では、始めます」
七海は深呼吸を一つすると静かに頷き、彼女も肩を抱えられながら全身の力を抜いた。さすが酒の失敗エピソードが多数の猛者、酔っ払いの演技が板についている。七海は少々複雑な思いを抱きながらも彼女の提案する遊びに付き合ってやろうと決めた。
「さあ着きました。後は水を飲んでゆっくり休んでください。もうこんなになるまで飲んではいけませんよ」
七海は玄関先で彼女を降ろして座らせた。ぼんやりとした表情、潤んだ瞳、乱れた着衣が妙に生々しい。先ほど着替えたばかりだというのにスカートから覗くストッキングは膝から上が既に伝線しており艶めかしさを演出している。目に涙を溜めた彼女が申し訳なさそうに口を開く。
「ごめんなさい。あの、お巡りさん、ちょっと待ってください。最後に、一つだけ、私のお願い聞いてもらえませんか」
「どうしましたか」
「私、一人じゃ歩けなくて、ベッドまで連れて行って欲しいんです……」
「仕方ないですね。さあ、しっかり立ってください」
七海は靴を玄関で脱ぎ捨て、へたり込む彼女の脇の下に肩を入れて支えた。じっとりと汗ばんでいる。女性らしい清潔感のある石鹸のような匂いと、仕事終わりで少し蒸れた汗の匂いが混じってエロティックだ。先ほど呷ったばかりのカクテルだろうか、半開きの口元から微かにレモンの香りもする。
「ん、ありがとう、ございます」
彼女は自分ではほとんど歩かず、七海に体重をかけてふらふらとしていた。なんとか強引にベッドまで運び座らせると、覚束ない手つきでのろのろとジャケットを脱ぎ床に滑り落した。それからベッドに倒れ込み大きなため息をついて目を閉じる。
「では私はこれで」
七海が立ち去ろうとすると気だるげに目を開け、ふらふらと腕を伸ばして彼の袖を掴む。そして艶々と濡れた唇をゆっくりと動かして何かを告げた。よく聞き取れなかった七海は、身を屈めて彼女の口元へと耳を寄せる。
「お巡りさん、お名前は。後日お礼に伺います」
「七海です。これは仕事ですのでお礼は結構。では」
そういって再び立ち去ろうとしたのに、彼女は七海の袖を掴んだまま離さない。身体を少しだけ起こして肘をつき七海の瞳をじっと見つめる。何とも言えぬ色香を纏ったその姿に堪らず七海は目を伏せるが、俯いたその視線の先には先刻より大きく破れたストッキングとそこから見える生白く肉感のある大腿だった。演技にしてはこなれている。彼女はこういった経験が何度もあるのだろうか。七海は少しの苛立ちを感じた。
「待って。お水だけ、一杯いただけませんか。ほんとに、これが最後ですから。冷蔵庫にペットボトルが入ってるので」
彼女はそういってキッチンを指差す。七海は無言で立ち上がり、冷蔵庫の中から飲みかけのペットボトルを取り出して彼女に手渡した。立った七海からは無防備に開いた胸元が丸見えになっている。白いカッターシャツの下には派手なレースをあしらったワインレッドの下着がちらりと見え、そのリアルさに生唾を飲む。最近購入したものなのか以前から持っていたのか、七海には見覚えのない下着だった。七海の舐めるような視線には気づかぬ振りをして、彼女は半分だけ身体を起こして水を飲もうとした。すると口角から水が流れ落ち彼女の胸元を濡らす。
「……あぁっ」
ついにはペットボトルまで彼女の手から滑り落ち、スカートまでびしょびしょに濡らしてしまった。ごとりと床にボトルが落ち、中身の水はだらだらと流れ出た。はっとして七海が拾い上げて蓋を閉めると、目の前には水に濡れた彼女の皮膚にへばりつくカッターシャツが目に入り七海の心臓は大きな音を立てて跳ねる。彼女は心底困ったという声色で言う。
「下着まで、びしょ濡れになっちゃった……。どうしよう」
それからゆっくりと身体を起こして七海を上目遣いで見上げた。
「……着替えられてはどうですか」
「一人じゃできそうにないので、手伝っていただけますか……? 念入りに拭かないと、お巡りさんのせいで、風邪ひいちゃうかも」
濡れたカッターシャツの肩口を摘まみ、やれやれ困ったことになったと、わざとらしくきょろきょろと辺りを見回している。
「それは……。私の業務の範囲外ですので対応しかねます」
「市民を助けるのがお仕事でしょう? ……それに、ここも、ここも、アソコも、こんなに濡れちゃって、すっごく変なんです」
胸元を広げたり袖口を引っ張ったりして七海に視線を送る。それからスカートをショーツが見えそうな程捲り上げ、水に濡れていないか確認してくれと言う。
「身体を拭くだけですよ」
七海がついに折れてそう言うと、タオルが洗面所にあると言って取りに行かせた。戻って来た七海がバスタオルを差し出すと、彼女は首を横に振ってやんわりとそれを突き返した。七海は受け取ってもらえないタオルを持ったまま大きなため息をついていかにも嫌々というように肩や脇腹をやや乱雑に拭いた後、胸元は自分でやるようにと伝えて彼女にタオルを投げて渡す。しかし受け取る素振りを全く見せず、目を閉じて「痛くしないでくださいね」と言い、顎を持ち上げ胸元を拭くように促した。滑らかで張りのある肌が水を弾き、下着に形作られた豊満な谷間が嫌でも目に付く。なるべく強く触れないよう優しく拭き上げると彼女はくぐもった声を出した。
「あっ、やだぁ……そこ……」
「ッ……! おかしな声を出さないように」
慌てて七海が手を離すと、彼女はフラフラと身体を揺らしながらベッドに倒れ込んだ。それからタオルを胸元に抱きかかえて口元を隠しながら七海を涙目で見上げてこう言った。
「だって、お巡りさんの手つきが、なんだか厭らしくって……」
「拭けと言ったのはあなたですよ」
七海は彼女のタオルを引き毟るように取り上げると捲りあがったスカートにあてがい、ごしごしと力を込めて拭いた。それから下腹部を圧迫するように押し拭くと彼女は更に悩ましい声を上げる。
「あン、も、優しくしてくださいっ……」
七海は片手で眼鏡を覆うようにして押し上げる。これは単なる遊びの一環であるはずなのに、酔って男を誘う彼女の仕草に腹立たしさを感じていた。自分から提案したものの彼女と七海の始まりに似たシチュエーションをなぞってしまい、苦悩の日々を思い出す。泥酔した彼女を自宅へ連れ込み、見当識を失った状態を理解していながら手篭めにしてしまい深く傷つけたことをやはり心の奥底でいつまでも後悔している。関係を修復して今は恋人同士として順調にやっていると思っているが、彼女の方はどうなのだろう。
そんな七海の葛藤は露知らず、彼女は嬉々として自らの身体を淫猥に晒し七海の欲望を煽りに煽った。ちらりと七海を横目で見ると額にじわりと汗をかき、いつもと違う紺色のスラックスの股間は既に膨らみを見せている。普段の七海はこんな行為とは程遠い姿をしているのに、彼女の前では内に秘めた欲望を曝け出し今にも喉元に噛みつかんとする獣のような瞳の色をしていた。
七海は少しの戸惑いを感じていた先程とは打って変わって、ベッドに倒れ込む彼女の手首を掴んで押さえつけながら冷たく低い声で告げる。
「あなた、職業は高校の教員と言っていましたね。こんな派手な下着をつけて授業を?」
そう言うと肩紐をなぞりカッターシャツを引き裂くように引っ張ってカップを露出させる。濃い赤紫色のブラジャーが暴かれた。
「やぁッ、これは、違うんです」
「とんだ淫行教師だ。生徒達にこんな姿見せられますか。一体何を教えているんでしょう」
彼女は首を横に振りながら否定して、もごもご言いながら苦しい言い訳をした。
「これは、友人に貰ったもので……」
「どういう“友人”ですか。刑法第一七四条又は第一七九条に抵触している可能性がある。こちらは証拠として押収します」
「……っ、そんな」
拒否の声を無視してボタンを外し、上半身を露わにするとブラジャーの上から七海の大きな手が双丘を包み込み揉みしだく。我慢できずに彼女は嬌声をあげた。すると七海は口角を釣り上げて不敵な笑みを浮かべ、カップを押し上げ柔らかな膨らみを外気に触れさせた。既に彼女の乳頭は硬く勃起しており、指の腹で弱々しく押し上げると両膝を擦り合わせてその刺激に反応を示す。更に指で押し、軽く摘まみ上げた。彼女は鼻に抜ける甘い声を出してよがる。
「んんん……っ! あっ、ハァ……」
「どうも様子がおかしいので身体検査の必要もありそうですね。足を開いてください」
彼女は大人しく足を開いた。股布に濃い染みを浮かせている。七海がそこを凝視して人差し指でなぞると大腿を震わせて反応を示す。
「ここは……。失禁しているんですか。下着が濡れていますが」
「お巡りさんが、エッチなことするから……」
「取り調べているだけなのに、おかしな声を出したりこんなに濡らしたりして、性的な思考に囚われているあなたのせいでは」
七海が彼女を睨みつけると、彼女は眉を下げた。それでも口元は微かに笑っていて挑発的な態度をとっている。それから自分の指で陰部をなぞり、下着の具合を確かめた。
「ここの、奥がキュウキュウしておかしいんです。調べてください……」
「よく見えません。下着を脱いで仰向けになり、膝を抱えて私に見えるように腰を浮かせて下さい」
指示通りに七海へ向けて陰部を晒す。彼女はあまりの羞恥に身震いして瞼を閉じ、顔を逸らした。
「入口付近はどろどろの粘液が滲んでいる。この膨らみはなんですか」
そう言うと七海は陰核を親指の腹で潰すように押した。電流が走ったような快感が全身を突き抜け、彼女は思わず腰を引く。
「ひっ、そこ、っやだぁ……っ! それは、クリトリスです……。気持ちよくなると、ちょっと、膨らんで……。恥ずかしい」
「粘液が溢れてきました。どうも膣の奥に何か隠し事があるようですね」
七海が中指を思いきり中に突っ込むと、今度は更に奥へと導くかのように腰を突き出し受け入れた。中の肉襞が吸い付いて逃すまいと絡みつく。七海は反対の手で陰唇を広げ陰核の膨らみをなぞっていた。彼女は腰をぐいぐいと押し付けて更に強い刺激を望んでいる。頬は火照り目は虚ろだ。懸命に自分で足を開いて角度をつけ、いいところに当てようと調整している。快感を求めて必死になる彼女を見て七海は得も言われぬ征服感を感じていた。
「あぅ、ふっ……、い、いっちゃうぅ……。ああ……」
「中がうねって私の指をぎゅうぎゅうと締め付けてくる。これじゃあ中がよく見えません。しっかり開いて確認します」
そう言うと七海はベルトにつけられた懐中電灯を取り出し左手に逆手で持って、股の中心部を照らす。白色のライトを受けてぬめった体液がぎらぎらと光るそこに七海の中指が埋まって中を探っていた。思い切り奥へと進めるが肉の壁を擦るだけで最奥へとは到達できない。角度を変えて何度か抜き差しをするも、彼女が快楽を求めて腰を振るだけで目的のものは発見できなかった。七海は彼女の陰部に差し込まれた指を一旦引き抜くと、今度は人差し指も一緒に挿入して中を触って確かめる。腹側に折り曲げるといつものいい所に当たって彼女はまた果ててしまう。腰を浮かせて悦んでいると七海の指が中でばらばらと動きまた快感の波が訪れ体液がどろりと穴から溢れ出た。複数回達して中の痙攣が治まってくると、今度は締め付けが弱まり中の肉がふわふわと柔らかくなる。七海はその変化を感じ取ると二本の指を狭い穴の中で開いて懐中電灯で照らし、奥を観察した。膣壁は濃い桃色をしていて透明の粘液を分泌させている。光を映し、膣道全体がてらてらと輝いた。口腔内と同様に粘膜で構築されたこの道は、間違いなく彼女の内臓へと続いている。子を宿し育てるための臓器である子宮を守るためそう容易くは捕えられないように出来ているのだ。だが、それを暴きたい。七海の欲望は肥大するばかりで止まるところを知らなかった。この奥に恐らく子宮口があるのに角度を変えて覗き込むがよく見えず、七海は大きなため息をついて指を躊躇なく引き抜いた。ライトに照らされた膣壁はすぐに閉鎖して中に溜まっていた体液を押し出し、だらりと彼女の肛門側へと流れ出た。七海の指が陰部から糸を引いて離れていくのが見える。姿勢を戻すよう七海が言うと彼女は静かに足を閉じた。それからベッドの端に座って空っぽになってしまった穴の中を確かめるようにもじもじと足を擦り合わせる。
ベッドサイドに立った七海は彼女の体液でべとべとに汚れた手をバスタオルで拭いながらその光景を見下ろし、この女を今すぐに自分の好きにしてやりたいという欲望に抗おうとしていた。物欲しそうにしている姿を見て我慢できる男がいるだろうか。今すぐにでも組み敷いて突っ込みめちゃくちゃに突き上げてしまいたかったが、もうしばらく彼女の遊びに付き合ってやることにする。
「入り口付近には何も見当たりません。奥に何かあるのでは。隠さずに言ってください」
「奥はっ……、だめなんです」
「正直に言わないのなら、直接触れて確認するしかないですね。ただ、指だけではどうも一番奥まで十分に確認できない。見るだけなら膣鏡さえあれば観察できますが、ここはあなたの家でそんなものはないし、どうしたものか」
七海が言い終えると、彼女はベッドから降りて跪き七海の股間を撫で上げながら呟いた。
「あのぉ、お巡りさんの、これで、私の、ここの奥の方、とんとんって触ってみたらいいんじゃないでしょうか」
ズボンと下着の中で納まりきらないほど既にずっしりと硬く、重々しく勃起していた。二枚の布を隔ててもなお熱を持つ陰茎を手のひらに感じ、どうしても欲しくなってしまう。彼女はこのまま頬ずりして匂いを嗅ぎ口に含みたい衝動に駆られた。どうしようもなく疼く。この苦痛にさえ感じられる衝迫を落ち着かせる方法は一つしかない。
「これ、すっごく大きくて、長そうだし、きっと届くと思うんです」
「成程。それは一理あります。ただそうすると、これはもう取り調べではなくセックスになってしまうと思いませんか。それはお互いにまずいのでは」
「そんなっ、違いますっ。調べて貰うだけだから、セックスじゃありませんっ」
彼女は七海の股間に手を添わせたまま必死で訴えた。今にも泣きだしそうな顔をしており七海の加虐心を煽る。
「暴論ですが、まあ他に方法も見つかりませんし、この際仕方ないですね。私の勃起したペニスをあなたの奥へ差し込んで、中がどうなっているか確認します」
七海はそう言うとズボンの上から自らの股間を押さえた。彼女の目の前で布地が起立した陰茎に張り付いてより鮮明に形がわかるようになり、ごくりと喉を鳴らし目が逸らせなくなった。それから先程七海が口にした性器の名称があまりにも衝撃的でどうにかなってしまいそうだった。普段の振る舞いや口調からは信じられない。あの七海が、あんな事を言うなんて。
彼女のぼんやりした様子に気づいた七海はわざとらしくゆっくりとベルトをはずし、見せつけるようにじわじわとジッパー降ろす。窮屈なズボンが床へ適当に置かれその下から黒いボクサーパンツが現れた。張り詰めた下着の中に無理矢理納められているものの形をくっきりと浮かび上がらせている。ぴたりと七海の肌に纏わりつくその布の下には猛々しくそびえ立つ陰茎が隠れているのだろう。先端はじわりと濡れており、先走りを出しているのだとわかる。
「あなたが痴態を晒すから」
そう言って彼女の顎を掬うと先程まで焦った声を出していたのに急に大人しくなり、静かに呼吸を整え始める。七海が下着のウエストに手をかけてゆっくり下ろすと、張りのある亀頭が出てきた。そして血管を浮き上がらせて反り返った陰茎が全貌を現したところで、彼女はたまらずその硬い竿に直接触れてしまった。すると七海が彼女の手首を掴み制止する。恨めしそうな顔をして睨みつけてみるが、表情を全く変えない七海はそのまま彼女を立ち上がらせてベッドへと押し倒す。呆気なく寝転んだ彼女に続いてベッドに侵入し、力なく倒れる身体を跨いで胸の上あたりで膝をつく。怯えとも期待ともとれる表情の彼女の目の前にがちがちに勃起した陰茎を差し出しゆっくりと右手で掴み、男性器を誇示するようにごしごしと何度か扱く。七海は自分で与えた刺激に耐えきれず口の端から甘い吐息を漏らし、それを受け取った彼女の耳は真っ赤に色付いた。そのまま彼女は口をだらしなく半分ほど開けて、ただその淫猥な動きを目で追い首筋に汗を滲ませる。二人とも異常なほど興奮していた。ただの遊びのはずなのに、身体の芯から発情して性欲が抑えられない。まるで動物のようだ。今すぐ性器同士を繋ぎ合わせてめちゃくちゃに出し入れしてしまいたい。それからそのまま奥に押し付けて欲望のままに思いきり吐き出し合いたい。欲に塗れた男と女は止まるところを知らない。
「これを着けてください」
それでも七海が避妊具の包みを彼女へ差し出すと、震える手で封を切って乳白色の中身を取り出した。滑りを良くするためなのか潤滑剤がたっぷりと塗布されている。ごくありふれたものだと思っていたのに、陰茎を支えて装着したら先端が少し膨らんだ形になっており、竿の部分にはぽつぽつとした突起がいくつもついている。ただ精液を受け止めるための袋ではなく、セックスにちょっとしたスパイスを加えるための加工が施されてある。それを知ってしまった彼女はこれから始まる行為と快感を想像し胸が高鳴った。早く欲しい。最早それしか考えられなかった。
「先程のようにしっかりと足を支えておくように」
足を広げた彼女の大腿を支えて膣のぬめりを確認する。このまま挿入して差し支えないとわかると、痛いくらいに勃起した陰茎を支えて膣口に当てがった。いよいよ始まる。後戻りはできない。
「一気に挿入しますから力を抜いて。まずは最奥に届くか確かめます」
七海が腰を落とすとぐじゅりと音を立てて彼女の膣内に七海の陰茎が勢いよく嵌まり込む。突然の強い刺激に耐えかねた彼女は背中を反らして快感を逃そうとした。そんなことは関係ないというように、七海は彼女の最奥に到達したことを確認するために角度を変えて二、三回中を捏ねた。亀頭に子宮口が当たったのがわかると更に奥へと押し付ける。男のものが入ってきたことを確かめるために下りてきた子宮は、その存在を認識すると僅かに収縮して悦びを表す。それが腹の中から彼女に伝わり意識を飛ばしそうになるほどの快楽をもたらした。
「……ぉッ……っうぁあっ、」
「ああ、きつくて、ちょっと、わかりにくいですが、奥に、コリコリした何かに触れますね」
そう言うと性器同士を更に密着させ奥を探るように突き回す。接合部にはぐちぐちと掻きまわされてあふれ出た粘液が泡立ち付着している。
「そ、それぇ……、いや、だめ、ああっ」
「これがあなたの隠していたものですか」
七海は執拗に奥ばかりを責め立てた。彼女は既に何度も達して目にはうっすらと涙を浮かべ膝を抱える手の力が抜けてしまっている。いつも以上に深く達しているようで言葉にならない喘ぎ声をあげながらだらしなく開脚して七海にひたすら揺さぶられている。虚ろな目をして遠くを見つめているので、こちらに引き戻すために七海はふるふると揺れる両胸を強い力で掴んだ。
「質問しているんですが」
「ひぃ、いたぁっ!」
悲鳴に近い声を上げたが、そのお陰か意識ははっきりしたようだ。
そして七海は突然ぴたりと動きを止める。彼女は不思議そうに見上げ、腰を揺らして続きを求めたが全く動く気配を見せない。
「公務の最中にこんなことをしてしまって、処分を受けるかもしれない。もう止めないと」
我に返ってしまったのか七海が陰茎を引き抜こうとすると、彼女は咄嗟に彼の腰に足を絡めて拒んだ。弱々しい力だったのですぐにでも振りほどけそうだが、悲痛な表情で七海に訴える彼女を見ると意地悪に焦らしてやりたい気持ちになる。
「ぜ、ぜったい、誰にも、言いません……! やめないで!」
おもちゃを取り上げられそうな子どものように目に涙を浮かべて必死に懇願している。
「セックスしたいだけでは」
「したいです、お巡りさんと、セックスしたいっ」
どこまでも欲望に素直に、性行為を望んで男に媚びて懇願する。プレイだと解っているのに、いつかの彼女と重ねてしまいじわじわとどす黒い感情が七海の胸を侵食してきた。
他の誰かにもこんな姿を見せたのだろうか。どこで相手を見つけていたのか、誰にでも身体を許したのか。彼女を嬲った男はどんな奴で、今はどこで、何をしているのだ。
過去の事は不問にすると誓ったが、ふとした瞬間頭をもたげてくる。忘れられるわけがない。彼女を傷つけて突き放しそんな行為に走らせたのは自分だと解っているのに、七海の中には既にどうしようもないほど暗い怒りが充満していた。
「最初からそれが目的だったんですね。誰にでもそうなんですか」
最早当初のプレイとはかけ離れた思考になってしまっていたが、七海は言わずにはいられなかった。まだ彼女に埋まったままだった陰茎を無理矢理引き抜いてベッドへ彼女の身体を押し付けると、肩を強く押されたまま怯えたような表情で七海を見上げながら震える声で答える。
「お巡りさん、かっこよくって、いい匂いで、したくなっちゃったんです」
彼女はこれで正解だろうかと考えながら言った。しかし、言い終えた瞬間、間違っていたのだと解る。七海の瞳に宿る色が冷え切ってしまったからだ。
「したくなっちゃったって……。呆れましたね。しかも教員なんでしょう。信じられない。良い大人なのに見境なく盛るなんて最低ですよ。やめましょう。もう終わりです」
「ちがう! ちがうの、やめないでくださいっ」
七海は弁解しても聞く耳を持たず、肩を押さえつける力をますます強めた。それから彼女の耳元へと顔を近づけ一段と低い声を出し脅すように言った。
「では、もう、他の誰とも、セックスしないと約束しろ。私以外、誰にも、身体を許すな」
「わ、わかりましたぁ……ひ、う……もう、七海さん以外とセックスしません」
「わかったならいいです」
そう言うと七海は、再び彼女の陰部をこじ開けて挿入する。先ほどのやり取りでただならぬものを感じたのか、彼女の中は媚びるように七海を締め付けた。普段なら彼女を気持ちよくしてやりたい一心で好きな所を満足いくまで突いてやるのだが、今日の七海にそんな感情は微塵も無く、ただひたすら、自分が射精するためだけに腰を動かした。乱暴にされても文句の一つも言わず七海の下で口元を押えて声を殺しながら苦しそうにしている。怯えた表情をしているが時折達しているのだろう。急激な締め付けと共に彼女は身体を震わせたり背中を反らせたりしていた。それからしばらく好き勝手に動いた七海はこみ上げる射精感を堪えることなく彼女の奥に先端をぐりぐりと押し付けながら、薄いラテックス製のコンドームの中へと吐き出した。
長い射精を終え我に返って自分の下敷きになっている彼女を見るとぼろぼろと涙を流していたので慌てて起こして抱きしめた。最中は夢中になっていたので気づかなかったが、七海が押さえつけていた肩口は赤くなり手形が付いてしまっている。七海の胸の中でだらりと腕を下ろしていたが、しばらくすると腕を回して抱き返した。
「少しやりすぎました。あなたのことが好きなんです。誰にも渡したくない」
「うぅ、七海さんだけ、です。本当です。信じて」
「信じてます。ごめんなさい。怖かったですか」
彼女は首を横に振るとこぼれた涙をカッターシャツの袖で拭う。七海の手の痕が付いたところを彼女の指が撫でた。痛むのかと聞くが、痛くはないと言う。
「いいんです、もう大丈夫ですから。私こそ変な事言っちゃって、ごめんなさい」
「私のせいですから、あなたが謝る必要はない」
「めちゃくちゃ怒ってたじゃないですか……」
彼女はむっとして上目づかいで睨む。ばつの悪い七海はさっと視線を逸らし小さな声でもごもご喋った。
「それはちょっと、嫌な事を思い出してしまっただけです」
今までも時折違和感を感じることはあったが、先ほどの態度といい七海はどうも彼女の過去を勘違いしているようだった。
「……七海さん、私がすごいビッチだったと思ってませんか。それ、誤解ですから」
彼女が言うと、少しの間を空けて七海が答える。
「……そんなこと思ってない」
「思ってるでしょ。あのね、大学の時も教員免許とってからもちゃんと付き合ってた人はいましたし、あの日はたまたま知り合った人といい感じになるかもって思ってちょっとだけエッチな下着つけてましたけど、経験人数だって――」
「待って、それ以上聞きたくない。人数とか言わないでください」
七海は頭を抱えて首を振った。それでも負けじと彼女は食い下がる。
「七海さんだって童貞じゃなかったくせに」
「あの日まで童貞でした」
七海は彼女と目を合わせない様に下を向き、コンドームをはずしてティッシュペーパーに包んでゴミ箱へと投げる。多量の精液が入っていたのか、ぼとりとなかなかの質量を思わせる音を立ててゴミ箱の中へ入っていった。
「絶対嘘だ! 手慣れてた! 七海さんこそ言い寄る女全員とやってたんでしょ!」
彼女は七海の肩を掴んで振り向かせようとするが強い力で反発され動かない。ベッドの端の壁に向かって七海が聞き取りにくい小さな声で何やら弁解している。
「そんなわけないでしょう。馬鹿な事言わないでください。私を何だと思ってるんだ」
「じゃあ私で何人目なんですか。私も教えますから教えてください」
七海の顔の方へ回り込んで聞くが、ツンとしてそっぽを向いた。
「教えてもらう必要はないし、教えるつもりもない。もうこの話は終わりです」
ベッドの上で回りながら彼女から逃げていた七海だが、ぴたりと止まって彼女の唇を舐め上げる。このまま済し崩し的に誤魔化そうとしていることがわかった彼女はあまりにも腹が立ち七海の首筋に噛みついた。
「ずるいっ!」
七海は一瞬鋭い痛みを感じたが反応すると彼女が調子に乗ると思ったのでぐっと耐えた。薄っすら痕が付いたのを確認すると彼女は口を離し不服そうに七海を見つめて唸っている。
「続きをしましょう。このやり取りで、なぜかまた勃ってきた」
「最低! エッチしたいだけなんだ! やっぱりカラダ目当てなんだー!」
「もう何を言われてもいいですから、ここにゴロンと寝て。はい、どうぞ」
そう言うと七海はベッドをぽんぽんと叩いた。まるで犬や猫でも呼び寄せるようなその仕草に彼女は言いなりになるものかとそっぽを向く。
「ほんと、やだこの人! 信じられない!」
それでもベッドにうつ伏せになって腰を上げて誘ってしまう。結局、彼女もまだ足りなかった。
「文句言いながら寝るんじゃないですか。尻を突き出して、今度は後ろからしてほしいんですね」
「いっぱい気持ちよくしてくれないと、七海さんの元カノに秘密を聞きに行きますからね」
「あなたで童貞を卒業したので元カノなどいません。わけのわからないこと言ってないで、入れやすいように角度をつけて」
そう言うと七海はくしゃくしゃになった上に水か体液かわからない何かで濡れた布団を丸め、彼女の腰に入れて腰を上げやすいようにしてやる。その間彼女は足をばたつかせていたが七海に敵うわけもなく挿入しやすいようにセッティングされ、尻を突き出しながらも文句を言った。
「七海さん、嫌い!」
「子どもみたいなこと言ってないで。……ほら、入りましたよ、ここ、気持ちいいですね」
体重をかけてのしかかる七海が腰を落とすと、ぐちゃぐちゃになった穴に何の抵抗もなく陰茎が飲み込まれていく。そして後ろから入れた時にいつもすぐに果てるポイントをとんとんと叩くと、枕を抱えた彼女は途端に甘い声を出した。
「うぅ……、きもち、いい」
七海に知り尽くされた身体をいいようにされ、またすぐに気をやってしまった。それから調子に乗った七海は更にねちねちと彼女を責め続け、もうやめてくれと言ってもやめず、あまりのしつこさに腹を立てた彼女は七海の胸を押して形勢を逆転させた。そのまま上に乗って七海の乳頭を指と舌で責め立てしばらく腰を振っていると、あっけなく二回目の射精をした。
それから二人は思いの外盛り上がってしまい、最後はもうコスプレどころでは無くなっていた。事後、ベッドの下にくしゃくしゃに積まれた服を七海が拾い上げる。明らかに使用済みであるとわかる、不自然な皺がついていた。
「この仕事は誰と行くんですか」
「日下部先生です」
「あの人が着るんだったら、少しくたびれてた方がいいでしょう」
「じゃあちょうど良かったですね」
「……洗濯はします」