ラブラドールに転生!?今世はもふもふワンちゃんと一緒!


――君はうそつきだ。どこにもいないじゃないか。

 生まれ変わった七海はずっと彼女を探していた。もう高校生になるのに一向に見つかる気配はない。虫や鳥になったのかもしれないと思い、今世で不殺を貫いてきた。食べ物だって大豆ミートや野菜を主食として肉を食べないようにしている。だって七海が口にした肉がもしも彼女の生まれ変わりだったとしたら。そんなことを思うと、一匹たりとも殺生する気になれなかった。日本にいないのかもしれないと思い、短期留学をしたりネットでそれらしき姿を探したりするが見つからない。

『次の世界では一緒になって欲しい』

 彼女の手紙には確かにそう書かれていた。それなのに、一体どこにいるというのだ!

 ある日、七海は灰原雄だった人物に誘われてショッピングモールに来ていた。正直こんなところで遊んでいる暇は一秒だってない。一日も早く彼女を探し出す。そして結婚する。そのために自分は生きているのだと人生で何十回目かの話を灰原に熱弁した。何度も聞かされたそれを親友はうんうん頷きながら聞き、いつものように七海を励ました。そこまでが二人のお決まりだ。それから本屋を見て参考書を数冊買い、魚になったかもしれないと、ペットショップの水槽の中をじっと見つめる。長いひげのナマズのような生き物が水槽の底に沈んでいた。もしも彼女が熱帯魚になってしまったとしても、コイツではないだろうと七海は思った。もっと美しい、例えばグッピーとかベタとか、まあ、そういう綺麗な何かになっているはずだ。だって彼女はこの世の何よりも美しいのだから。仮に植物にも命があると考えたら、水草にでもなっているのかもしれない。それならサラダも食べられないじゃないかと、七海は胸が圧迫されたような息苦しさを感じた。ここ最近は特に、目に入るもの全てが彼女に関係すると思えてしまって、もうどうしようもない。だから七海は刺激の多い場所が嫌いだった。

「七海おいでよ! あはは、くすぐったい!」

 必死に水槽の中に彼女の痕跡が無いか調べているとき、犬猫のショーケースのほうから灰原の呑気な声が聞こえてきた。いつもは底抜けに明るい男に励まされているが今日は違う。いつまでも適当な慰めで誤魔化されやしないぞ、と七海は意固地になっている。

(うるさいな。今は熱帯魚になった彼女を探しているんだ。いつか絶対会えるよって灰原は無責任に言うけど、今まで十六年間も会えないままじゃないか!)

 いつも灰原はショッピングモールにくると、買いもしないくせに子犬を抱かせてもらっている。もしかしたら犬になってるかもでしょ、というのが灰原の言い分だが、七海にはただの犬好きがタダで触りたいだけに見えた。それよりも、生まれ変わりのサイクルが早い魚や虫を調べるべきだ。はたまた兎や文鳥か。いいや蛇やハムスターの可能性もある。最悪、エサのコオロギだったとしたらこの店のコオロギすべてを買い占めるだけの小遣いはある。

「ふわふわ~。いいこだね。ねえ、七海こっち来なって! 絶対この子だから!」
「そんなわけないだろ。適当なこと言ってないで――」

 七海が振り返り灰原の胸の中にいる子犬を見たとき、雷に打たれたような衝撃が走った。

「キャンキャン!」
――ななみ! ななみ! やっと会えたね!

 それは子犬も同じようで、激しく尻尾を振りまくりパタパタとおしっこを漏らしながら灰原の腕から飛び出そうと大暴れ。七海は確信した。間違いない。なぜなら七海が彼女を見間違えるわけがない。理由なんてこれで十分だろう。

「嘘だろ……。やっと……!」
「えっ。ほんとに?」

 自分からこの子が彼女だと言ったくせに、灰原は目を丸くしている。そんな灰原の元へと駆け寄りながら七海は一筋の涙が頬を伝うのを感じていた。どんなに離れていても、どんな姿になっても、魂同士が惹かれ合う。胸が震え息ができない。七海は思う。今世でも出会うのは必然だったのだ。
 七海は〝彼女〟を抱き上げた。それはそれはもふもふでぽよぽよでくたくたのかわいい〝子犬〟 だ。確かに会えればどんな姿でも愛せるとは言った。でも――。
 
「なんでラブラドールになってる……!」
 
 七海がその子犬の頬をぎゅうぎゅう揉みながらむっつり睨むと、子犬になってしまった彼女は申し訳なさそうに眉をひそめて「クゥ~ン」と鳴いた。彼女曰く、くじ引きでこれに決まったんだから仕方ないでしょ、許してね、だそうだ。

 それから七海は貯金を全額出してラブラドールを自宅に迎えた。毎日の散歩はもちろん、ブラッシングやエサやりも欠かさない。寝食を共にして学校以外の時間はずっと一緒に過ごした。子犬はすくすくと育ってつややかな毛並みの成犬になった。平均的な個体より小さいが健康で活発だ。七海のいうことはしっかりと聞き、とてもよくなついていた。そんな一人と一匹が前世から結ばれていることは、数少ない友人しか知らない秘密だ。

 ある日の昼下がり。いつものように散歩とブラッシングを終えて帰宅した二人。今日はシャワーの日だ。風呂はあまり好きでは無いらしくいつも嫌そうにするくせに、その日に限って嬉しそうにバスルームへとついてきた。自ら浴室へ入りおすわりをして七海を待つ。Tシャツとハーフパンツに着替えた七海がシャワーをかけようとすると、彼女は手をペロペロと舐めて制止した。それから七海のズボンを咥えて引っ張り、下ろそうとしはじめる。

「こ、こら……!」
「ワンワン!」

 二人の間に言葉でのコミュニケーションは無いが、お互いに相手が何を求めているかはわかる。飼犬の言いたいことはなんとなくわかるものだが、その次元を超えて、まるでテレパシーで通じ合っているのではないかというほど相手の想いが流れ込んでくる。彼女はこう言っている。
 
――七海大好き! ひとつになりたい!
 
 彼女は今日で一歳になり、犬人生初の発情期を迎えていた。陰部はぼってりと腫れて赤くなっている。ぬめった粘液も分泌させており、少し出血していることもある。

「そんなこと、いけません。犬と人間ですよ」
――でも七海としたいよぉ。

 彼女はキューン……、と悲しそうにしょんぼりとしてうつむいた。そんな顔をするな。決意が揺らぐではないか。七海は優しく彼女を撫でてやる。これで落ち着いてくれればいいが。

「でもじゃない。怪我したらどうする」

 彼女はワンワン、と元気な声で鳴き、ニコニコと笑った。

――大丈夫だよ! 
「大丈夫なわけないでしょう。絶対ダメ。離しなさい」

 いつもは七海に従順だが今日は違う。頑として譲らない。七海のズボンを咥えて離さず、ついには引きずり下ろした。それから下着も引っ張り下ろすと、明らかに勃起したペニスがぶるんと飛び出した。ほら見ろとでも言わんばかりに彼女は尻尾を振りまくり、七海の股間に顔を埋める。短いけれど滑らかな彼女の体毛が七海の内股に触れると、くすぐったいと同時に性的な快感のようなものを感じてしまう。

――七海、おっきくなってる!

 バフバフと息を漏らして抗議してくる。咎めているくせにやる気満々ではないかと言われているようだ。

「これくらいの年代の男は四六時中たってるんです。いつもみたいに見てくれるだけでいい。無茶はやめて」

 そんな言い訳なんてお構い無しに、彼女は七海をバスルームの床に押し倒した。それから顔中を舐めまわして喜んだ。更にはピクピクと震える七海のペニスに顔を埋める。ヒヤリと濡れた鼻先がつめたい。次の瞬間、彼女がペロペロと七海のペニスを舐めた。チロチロを控えめに触れられる感覚がもどかしい。

「アッ……、も、ほんとに、ダメだって言ってるのに……!」

 キャンキャンと鳴いて、そのまま陰嚢も舐め回す。興奮のあまり力加減ができないようで、少し痛い。

「わ、ちょ、ちょっと!」

 フガフガと鼻を鳴らして七海のペニスやアヌスの匂いを確認している。当然、七海も発情していた。鼻のいい彼女にはバレバレだ。

「匂い、嗅ぐの、やめてっ」
――七海もしたいでしょ!

 彼女は乱暴に七海の下半身を舐めまわした。こみ上げる射精感を必死で堪えて彼女をなんとか引き離そうとするが、雌犬とはいえ大型犬なので力が強い。

――七海が欲しいよお! 絶対大丈夫!
「欲しいじゃない! できるわけないでしょうそんなこと。え? だから大丈夫なわけない。大人しくして!」

 腰をヘコヘコと振りながら夢中になって舐りまくる彼女がなんだか不憫に思えてきた。初めての発情期で自制がきかないのだろう。それに、敏感になった下半身を刺激され続け、こんなにされてしまっては、もうどうしようもない。

「も、あっ、だめ、で、でるッ」

 彼女の勢いに流されるまま舐められて呆気なく達した七海に激しい罪悪感が押し寄せる。いくら中身が彼女であるとはいえ、今はラブラドール・レトリバーだ。ヒトとイヌが交わるなんて道徳に反している。前世では彼女そっくりのラブドールを作って散々背徳的な行為に耽っていた七海にも、それくらいの分別はあるのだ。

 浴室で大暴れする彼女をなんとか洗い終えて二人の部屋へと戻る。彼女は未だ興奮冷めやらぬ様子で七海の周りをぐるぐるして手足を舐めまわしている。犬用シャンプーの清潔な香りに混じってむせ返るような雌犬の匂いが部屋に充満してきた。彼女はずっと切なそうな鳴き声を出し、七海を求め続けている。まん丸の黒い目がキュルンと潤んで七海を見上げる。

――七海が大好きなの!
「もう、わかったから、落ち着いて」
――はやくっ、はやくっ! 交尾したい!
「交尾って……。犬と、どうやって? 本当に大丈夫なんでしょうか」
――七海と子作りエッチしたい! おちんちんほしい!
「ヤバいな。発情期でおかしくなってる……。中身は君とはいえ、身体はラブラドールですからね。……ちょっとだけですよ」
――ここ、ここ!

 彼女が尻を上げて尻尾をブンブンと振り回す。チクチクとした毛先が七海の臍を撫でた。七海は意を決して、彼女の腰あたりを掴む。待ってましたと言わんばかりに尻をさらに突き出してくるので、七海のペニスに犬の彼女の割れ目が当たった。湿ってはいるが人間のようにぬるぬると濡れてはいないようで不安が増すが、そんなことはお構い無しに彼女はグイグイと後ろに下がって自ら七海のモノを受け入れ始めた。

――七海と交尾だ! きもちいなあ!
「あっ、ちょ、うぅ……、狭、い……!」

 彼女主導でついに七海の亀頭が彼女の中に埋まった。ヒトよりも高い体温が心地よい。熱い粘膜が七海のペニスを包んで、溶けてしまいそうだ。さらに彼女は自ら後退し、七海のものを奥へと導いていく。ギチギチに狭い犬の膣の中を進むと、奥に当たって止まってしまった。

「ぅ……、ぁあ……、いい、これ……」

 七海はあまりの快感にだらしなく喘ぎ声を出して顔を蕩けさせた。そんな七海の反応を楽しみながら、彼女はぴょこぴょことこ腰を跳ねさせて悦ぶ。

――きもちい! ななみ! だいすき!
「私も、君を、愛してる!」

 愛の告白を受けて、ぎゅうぎゅうと七海のペニスを締め上げて彼女が達した。鼻息を荒らげ「クゥ〜、クゥ〜……」と切なそうな声で鳴いている。彼女もよほど気持ちがいいのだろう。やってしまったな、と七海は思った。今さら道徳がどうとか言うつもりはないが、これはなんとなくマズい気がする。ぼんやりした頭で部屋の隅にある姿見に映る二人を横目で見たとき、自分たちの行為がとんでもないものに思えて一気に快感の波が押し寄せる。たまらず七海はペニスを引き抜いて床目掛けて射精した。背徳感のある行為ほど、性的な快感は増すのだろう。

「あ……、イッ……、 ぉお……!」
――あーッ! 赤ちゃん欲しいのにぃ!

 買い替えたばかりのラグに向かってゴシゴシをペニスを扱きあげる七海に、未だ彼女は尻を高くかかげていた。まだまだ足りないようで、腫れたヴァギナが痛々しい。必死になって求め続ける彼女を満足するまで慰めたやりたい。そんな気持ちになってくる。

「どんな姿だって、どこにいたって、君のことを愛してる」
――七海、もっとしよ!

 萎えることなく硬さを保ったペニスを彼女がざらつく舌で舐め上げる。痺れるような快感が七海の身体を駆け巡り、考えが纏まらない。
 
 もういいか。中に出しても。もしも赤ちゃんができたなら、二人で愛情たっぷりに育てよう。大丈夫。君との子なら、どんな姿だってかまわない。例え君がラブラドールだったとしても、次は二人で鳥になったとしても、どんな形でもこの魂は、君しか求めていないんだ。