七海の唇の形を確かめるように舐め上げたら、彼女は静かに離れていった。ここが屋外でなければ。仕事でなければ。怪我さえなければ。七海はすぐにでも彼女をその場に組み敷いていたかもしれない。しかしすべての条件が悪い。だから今、七海は彼女の言う通りにするしかない。なぜならここは夜のプールで、今日は仕事で、相手は負傷している。だから自分は耐えているのだと七海は心の中で呟いた。何度も何度も、自分に言い聞かせるように。
「お着替えは部屋でしようね」
へたり込んだまま動かない七海に向かって白く細い手を伸ばし、口角を思いっきり上げて笑う彼女は今朝見た人と同一人物とは思えなかった。その手に触れてしまったら最後。今までのようには戻れない気がしたのに、七海は彼女の手を取ってしまった。夜とはいえ蒸し暑いプールサイド。あの小さな手に弄ばれていたときは溶けてしまいそうなほど全身が熱を持っていたはずだが、今はひやりと冷たい。短めに整えられた可愛らしい足の爪先が紫色に変色しているのを見て、七海は早く温めてやらなければならないと思った。濡れて冷えたに違いない。そんなことを考えながら七海が立ちあがったとき、水着の中のまだ熱く硬いモノがズキズキと疼いた。未だ治まることなく昂ぶり続けるペニスが布に擦れ、前屈みになってしまう。かなり意識ははっきりしてきたものの、まだ呪いの影響が強く性的な衝動をうまく制御できない。しかし彼女にこれ以上みっともない姿を見られるわけにはいかず、できるかぎり平静を装いなんとか声を絞り出す。
「大丈夫です。これから家入さんに連絡して――」
「噛まれたところが痛いから、私が着替えるの手伝って欲しいな」
七海の発言を途中で制して彼女が言う。悲しそうに瞳を濡らし、首元の咬傷を擦りながら弱々しい声を出している。どうにも嘘くさく演技じみていたが、彼女の首筋にくっきりと付いた歯形を見ると言い返すことができない。うっすらと滲む血液と鬱血痕が痛々しい。呪いのせいで理性を失っていたとはいえ、あの傷は間違いなく七海自身がつけたものだった。
「……それは、本当に申し訳ない事をしました。すみません」
震える声で謝罪する七海を覗き込み、彼女は妖艶に微笑む。それから繋がれた手をしっかりと握って七海を引っ張った。いつの間にか整えられていた彼女の水着を見てほっとしたような、申し訳ないような気持ちになってくる。手を引かれ、誰もいないプールサイドを為すすべなくとぼとぼと歩いていると、とんでもなく惨めな気持ちが湧き上がってきた。まるで罪人だ。いや、愛する人に暴力を振るい怪我までさせたのだから、罪人そのものに違いない。後ろからでもわかる彼女の首筋についた己の歯型を見て、七海は涙が零れそうになった。自分より明らかに身体が大きい男に組み敷かれて牙を剥かれ、さぞ怖かったことだろう。この罪をどうして償えばいいのだろうと考えていると、彼女が振り返って困ったように眉を顰めて言う。
「いっぱい出たから、こぼれちゃうかも」
申し訳なさそうな声とは裏腹に、なぜか彼女は嬉しそうに口元を綻ばせていた。いつもと違う不穏な様子に、七海の胸は鼓動を早めていた。普段は自信なさげに見える背筋はスラリと伸び、ついて行かざるを得ない凄みがある。ごくりと生唾を呑み、七海が歩みを進める。濡れたタイルの上をひたひた歩き、ナイトプールの出口に掛けてあったガウンを羽織る。ホテルの部屋に着くまで誰かに見られやしないかと気が気でなかったが、プールから部屋まで専用のエレベーターが設置してあり、幸いにも人とすれ違うことは無かった。高層階の豪華な一室の扉の前で彼女が振り返り、七海を見上げた。潤んだ瞳が官能的だ。何か言われるのかと七海は身構えたが、彼女は何も言わず再び七海に背を向けて彼の手を引き、室内へと導いた。ゆっくりとドアが閉まり、静まり返った室内に二人きり。未だ繋がれたままの手をそのまま猛った股座に押し付けたい衝動に駆られる。そんなことを考えていると、脳内に過ぎった妄想をそのまま実行してしまった。まだ催淫作用は抜けきっていないようだ。彼女を引き寄せ、己の股間を握らせる。ずっと熱い。まだ足りない。もっと出したい。七海が鼻息を荒げ首筋に顔を埋めようとすると、ペニスを根元から締め上げながら彼女が七海を見据えた。
「七海、ダメ」
「……ぅ、ぁ。早く手当を――」
先ほどはエロティックに見えた瞳は冷たく凍り付いているようで、七海は思わず腰を引いて情けない声をあげてしまった。そんな七海にはお構いなしに、彼女は根元をさらに強く握り込む。
「もう。あんなに出たのに、まだビンビン……」
「んグゥッ……! そんなに、したらッ……」
強い刺激に思わず悲鳴をあげてしまい、七海は唇を噛んだ。こんな姿を晒してしまい、あまりのみじめさに逃げ出してしまいたい。気持ちは萎えているのに下半身は性的な刺激を望み、ビクビクと震えた。彼女の手の力が緩んだと思うとまたすぐに力を籠められ、血液はますますペニスに集まり硬さを増していく。堪らず彼女の手の上からごしごしと上下に扱いていると、次第に射精感が込み上げてきた。肉欲に支配され我を忘れて人の手を借り快楽を貪る哀れな男を見つめながら、彼女は驚いたように目を丸くして、七海を下から覗き込む。
「また出ちゃう?」
「お願いです、もっと、優しく――」
七海が言い終わる前に、彼女は再び根元をきつく握った。ビクンと七海が震え、耐え切れずその場に崩れ落ちてしまった。彼女が寄り添うように腰を落とすと、真っ赤になった七海の耳たぶにわざとらしく熱い吐息を吹きかけながら言う。
「ぬるぬる。ぐちゃぐちゃ。びゅる~って出して、イッていいよ」
「ぁ……、うォ……、おぉ、も、で、でる、はぁーッ……」
それは悪魔の誘惑か、神の赦しか。彼女が言い終わったと同時に、七海は全身を震わせて精を吐き出した。尿道を抜ける精液の感覚が今まで以上にはっきりとわかり、気持ちよさでどうにかなってしまいそうだった。ぽかんと開いた口の端からは唾液が流れ落ちそうになっている。身がちぎれそうなほどの快楽が全身の神経を震わせて、頭からつま先までがビリビリと痺れた。女の手をひっつかみ無理矢理扱かせるという背徳的な行為もまた、快感を極限まで押し上げていた。すべすべで白い彼女の手が七海の股間をまさぐり、残った精液を押し出そうとまだごしごしと扱き上げている。射精したばかりのペニスは敏感になっていて、彼女の動きに合わせてみっともなく呻いてしまう。ただひたすら気持ちよくなるためだけにするケモノのような行為だった。いや、動物の方がまだマシだ。交尾は子孫を残すために行うのに、七海のそれは欲望のみの野蛮な行いなのだから。
尿道口から吹き出すように溢れる己の精液が水着の中に溢れるのを感じながら、七海は自分が今、どういう状況で、何をしているのか考えた。この世の誰よりも大切に想っている相手に噛みついて怪我をさせた。そのうえ、性処理までさせている。愛しい彼女を道具のように扱うなど、いくら呪いのせいであったとしても許されない。こんな七海を見て、彼女はどう思っているだろう。未だに痛々しく勃起し続ける股間を隠すように背中を丸め、必死に息を整えながら、七海は己の行いを何度も反芻していた。謝って済まされることではない。彼女の尊厳を傷つけてしまった。後悔の波が押し寄せる。そんな七海に降り注ぐ、彼女の熱い視線。
――先ほどからどうも、彼女の様子がおかしい。
「ここ、まだ治ってないみたい。さっきみたいにして欲しい?」
くすりと笑いながら、彼女は七海の陰嚢をゆるゆると揉んだ。
「ぉ……、ォお……」
しっとりと湿った手のひらに包まれ、頭がふわふわとして夢見心地の七海は、だらしなく口を開けて吐息を漏らす。熱を放散するためにだらりと垂れた袋はずっしりと重く、まだまだたくわえがありそうだ。彼女の指がぱらぱらと優しく動くたび、腰の辺りがむずむずして睾丸がギュウっと蠢いた。優しく甘やかな感覚は射精のように強烈な刺激は無いものの、理性を失わせるには十分だ。あの粘液を浴びてから、ずっとモヤがかかったようにすっきりしない。どこもかしこも熱い。もっと出さなければ。まだまだ足りない。目の前の雌を暴いて滅茶苦茶に犯し、種付けて自分だけのものにしたい。抗いきれない欲望が腹の中で蠢き、七海はぎらつく視線を彼女へと向けた。
「七海のコレ、重くて苦しそう」
凄む七海をものともせず、聖母のように穏やかな表情を浮かべながら彼女は七海の陰嚢をふわふわと揉みながら言う。たっぷりとした袋に入った二つの睾丸が、上に登ったり下に降りたりと中で蠢いているのを楽しんでいるようだ。その表情はいつものどこか自身なさげな彼女とは違い、迷いなく七海を見据えていた。責められているのか赦されているのかわからず、いたたまれない気持ちになってしまう。なんとか取り戻した理性で七海が弁明する。
「こんなこと、するつもりは無かった。だいたいあなたがヘマをするから――」
「そう。私のせい。七海は悪くない。だから、全部私にまかせてね」
彼女の柔らかい唇が、七海のカサついた唇に触れたと思うと、わざとらしく彼の言葉を妨げた。顔をくっ付け至近距離でぼそぼそと告げる彼女の口角が上がっているのを見て、七海は背筋がぞくぞくとした。得体のしれない感情が沸いてきて胸がそわそわする。これから一体、どうなってしまうのだろう。もしかしたら先ほど同様、彼女のいいようにされてしまうのかもしれない。床に這いつくばってペニスを布越しに擦られ射精してしまったことを思い出していると、先端から再び粘液がどろりと溢れ出てくるのを感じた。七海の陰嚢から名残惜しそうに小さな手が離れてゆく。そして部屋に入って来たとき同様、七海は女の細腕に引かれて部屋の奥へと進んだ。もう抗うことはできない。
入り口付近の薄暗さとは異なり、部屋に入ると明るく開放的な空間が広がっていた。大きくとられたガラス窓からは都会の煌びやかなネオンと共に、女に連れられ小さくなって歩く七海の姿が映る。背中を丸め不安そうな表情を浮かべている自分の姿を見て、七海は妙な高揚感を覚えていた。愛する人に身をゆだね、快感を与えられるという行為のなんと満たされることだろう。彼女からの信頼や深い愛情を感じながら、相手の望むことをさせてやり、更に快感を与えてもらう充足感。七海は戸惑いながらも自分の中で確実に芽吹いていく不思議な感情を噛みしめていた。これからここで始まろうとしている何かを想像してはいけない。きっともう、戻れなくなるだろう。
一方彼女はというと、満足そうに口角を上げて歩いていた。傍から見たら七海を従えているようだ。自分よりはるかに力が強い男の自由を奪って屈服させ、好きなように弄ぶ愉悦が忘れられない。今だってその気になれば簡単に振り払えるはずなのに、それをせず黙ってついてくる七海のなんと愛おしいことか。これは間違いなく真っ直ぐな愛であると彼女は頭の中で何度も繰り返し、七海をベッドへ腰掛けさせた。そっとガウンを羽織らせてやると、少し不満そうな声を出した。
「もう大丈夫なので、早く着替えて治療を――」
「七海のパンパンに腫れてるところ、私が治してあげる」
珍しく控えめなカラーのネイルが施された彼女の指が、項垂れる七海の顎を掬う。一瞬視線が重なったが、七海はすぐに逸らしてしまった。妖しく微笑む彼女の瞳に移った己の姿のなんと弱々しいことだろう。そんな哀れな七海のすべてを許すとでも言わんばかりに、彼の少し硬いブロンドに優しく口づけた。髪を手櫛で梳きながらチュッと小さなリップ音を立てて口付けを繰り返し、薄い唇を突き出してなんとも不安そうな七海の顔をそっと抱き寄せる。豊満な胸に包まれていると、なんだか甘えたいような気持ちが芽生えてきた。
「やめてください……」
「全部出しちゃってすっきりしようね」
彼女が引く気配は無い。それならばもう、仕方がない。好きなようにさせていたら、いつかは満足するだろう。まるで自分に言い聞かせるように七海は心の中でつぶやき、小さく頷いた。彼女が嬉しそうに息を吐くようにして笑う声が聞こえ、期待と不安が入り混じった複雑な気持ちを感じる。もうどうにでもなれと半ばやけくそになった七海が顔をあげると、彼女は先ほど同様笑みを浮かべていた。
「すごぉい。まだこんなにカチカチのまま……」
水着越しに触れる彼女の手のひらが熱い。耳元にかかる吐息が神経を撫でる。蒸れた汗の匂いに混じってプールの塩素臭が鼻を突き、先ほどのプールサイドでの出来事を思い出させた。縛り上げられ、蠢き、弄ばれる悦び。今まで想像さえしてこなかった世界を知り、体験し、その続きを望んでしまっている。
「ベッドに横になってね。七海の全部、私に見せて」
彼女に言われるまま、七海はキングサイズのベッドに仰向けになった。彼女に見下ろされていると思うと、下半身がヒクヒクと疼く。早く触って欲しいのに、それを口に出すことができない。七海がモタモタして視線を泳がせていると、彼女がベッドへと乗ってきた。わざとらしく股間を避けて大腿の上にまたがった彼女が七海に言う。
「いっつも私、こんなにおっきくてコワイの入れられてたんだ……」
痛々しく勃起したペニスを水着の上からなぞり、形を確かめる。すりすりと撫でられもどかしい刺激が腰を痺れさせた。握って、扱いて、舐めて欲しい。そんな薄汚い欲望を口に出すまいと七海は唇を噛みしめ、愛おしそうに己のペニスを撫で擦り、陰嚢をさやさやと思いのままに扱う彼女を恨めしそうに見つめた。急かすような視線を送り続けているのに、彼女はわざとらしく知らんぷりをしながら執拗に布越しの愛撫を続けた。自らの精液と先走りが潤滑剤となりグチグチと音を立てているのを聞いていると、頭がおかしくなりそうだ。いよいよ耐えかねた七海が彼女の手首を握って制止し、眉間に皺を寄せながらお前のせいだとでも言いたげな表情で吐き捨てる。
「やるなら、さっさとしてください」
「いい子でおねだりできたから、いっぱい出して楽にしてあげる」
七海の悪態をものともせず、嬉しそうに笑ってペニスを握りしめた。突然の強い刺激に悲鳴をあげそうになるが、唇を噛んで耐える。彼女の指が水着にかかりボトムをずらすと、ぶるんと勢いよくペニスが飛び出し、同時に精液やらカウパーも飛んだ。その一部が彼女の胸元へと付着して、白く瑞々しい肌を汚す。どこをとっても淫猥で、まるで別人だ。忠犬のように可愛らしく七海に纏わりついて離れない甘えただと思っていたのに、いつの間にこのような変貌を遂げたのだろう。記憶の限りをたどってみても、今日のような彼女は存在しなかった。今までの彼女は幻で、今日見た彼女が本当の姿なのだろうか。
外気に晒された七海のペニスをうっとりと眺め、優しく手のひらで包み込む。ぬるぬるとした粘液を絡ませ、じっくりと上下に擦ってやる。でこぼことした血管を確かめるように指を絡ませていると、七海の内股がピクピクと痙攣しはじめる。射精感が込み上げてくるのに、出すには至らないもどかしい刺激で気が狂いそうになる。七海は息を荒げながらシーツを掴み、腰をゆるゆると揺らして彼女の手にペニスを擦り付けた。彼女の手を使って自慰をしているようで罪悪感が込み上げる。けれども、いけないことほど、快感は増す。必死になって腰を振る七海を彼女は見つめた。もっと激しく扱き上げて欲しいと願っていることを理解しているはずなのに、きょとんと目を丸くして、首を傾げる姿に苛立ちが募る。わかっているだろうと目を細めて睨みつけてやっても、無垢な表情で七海のギラつく瞳を見つめ続けるのみだ。もう耐えられないと、彼女の手の上から七海が手を握り、しこしこと上下に扱きはじめる。
「こら。次からはもっとして欲しいってお口で言ってね」
「ふぁ……っ、お、オ、ッ……、も、もっと、キツ、く……!」
彼女は呆れたようにため息を吐いて、されるがままに律動を繰り返す。じっくりと眺めてみると、いつもの七海らしからぬ行動にとてつもない背徳的な感情が沸く。普段はツンと澄ましているくせに、女の下敷きになって淫らに性感を求める姿のなんとエロティックなことか。まだたくさんの快感を与えたい。もっとこの手で乱したい。さらに求められたい。彼女は己の腹の底に隠されていた欲望が沸々と煮え滾るの感じた。そんな彼女の欲望を知ってか知らずか、見つめられている七海の睾丸がギュウっと持ち上がり、陰嚢が引き締まり始める。ペニスはますます大きくなり、ドクドクと血が巡り震えはじめた。いよいよ射精が近いのだろう。ピンと伸ばした足をM字に開いてやると、尻の穴も同じくヒクついていた。触って欲しいと訴えているように思える。望みをかなえてやるべきだ。垂れ流しになった先走り液を指に纏わせ、優しく肛門の皺をなぞる。
「おしりの穴ヒクヒクしてる。かわいいね」
「……んッ! ちょ、何してるッ……、おっ、オ、や、やめ……!」
突然のことに七海の身体はビクリと跳ね、思わず腰が引けてしまう。そんなことはお構いなしに、彼女はペニスを扱きながら反対側の手で器用に尻の穴をつついた。初めての刺激を快感と捉えてしまった七海の身体は押し寄せる波に耐え切れず、びゅるびゅると精を吐き出してしまう。頭の先から爪の先まで駆け巡る電気信号に支配され、腰は跳ね、口はだらしなく開いた。嗚咽のような喘ぎが漏れてしまい、口を塞ぎたくなる。
「七海、気持ちいいんだね。ここ、好きなんだ?」
「そんなところ、汚い、触らないでッ……!」
肩で息をしている七海を眺め、彼女はにっこりとほほ笑んだ。なんとも嬉しそうにする様子は、やはりどこからどう見てもいつもの彼女では無い。同じパーツと同じ声なのに、振る舞いがまるで違う。戸惑う七海をよそに、彼女は小指の先端を七海の尻の穴へと静かに沈めた。射精の快感も冷めやらぬまま、まだ責めようというのだ。驚いて肛門を締めると異物感があり、力を抜いたら簡単に入ってしまいそうで、恐怖を感じる。それなのに、違和感なのか性的快感なのか、腰の辺りがムズムズして先程同様にヘコヘコと腰を揺らしてしまった。そんな七海の反応を見逃さず、彼女は尻たぶを割り開いて中央の穴に舌を這わせた。指とは異なるぬるりと柔らかいモノが触れる感覚で、何をされたかわかってしまう。排泄物が出てくる場所を女に舐めさせているという事実が信じられず、七海は首を上げて己の下半身を確認した。そこには確かに彼女が己の尻の穴をペロペロと舐める姿があり、二人の視線がバチンとぶつかる。
「ぅ……や、やめて……あっ、ン……、すみま、せッ……!」
「汗で蒸れてえっちな匂いがする。それから、ちょっと、ニガい。ふふふっ」
恥ずかしさと申し訳なさで真っ赤になりながら謝罪する七海を見ながら、彼女は赤い舌を出してチロチロと肛門の皺をなぞり続けた。やめてくれと言いつつも足を開いた姿勢は崩さず、再びペニスを硬く勃起させ、我慢できずに自分で擦り始めてきる。どんどん快感に素直になる七海を見て、彼女は満たされた気持ちを感じていた。
「かわいいなあ! 七海の全部、私に見せて」
「ッはぁ……、あッ……、あぁ……、ァ、ぅあぁ……!」
言葉にならない喘ぎだけを発し快楽を貪る恋人の尊さを噛みしめながら、考えうる限り最も優しく愛を籠めてアナルを舌と指先でほぐしてやる。少しずつ力が緩み、更に奥へと導くように、クパクパと穴が開いては閉じて誘い始めた。この先も二人で楽しみたいが、生憎今日は道具が何もない。七海の精液でどろどろになっているとはいえ、これ以上奥へ進むにはきちんとした準備がいるだろう。名残惜しいがここまでだ。彼女がそろりと小指の先を引き抜くと、途端にキュッと穴が締まる。しばらくヒクついて次の刺激を待っていたが、放っておくと諦めたのか穴は閉ざされた。射精に至らず物足りない様子の七海が不審そうな目で彼女を見た。悔しそうに唇を歪め、頬を引き攣らせながら言う。
「もうッ、お願いしますッ……」
「お願い?」
「最後は、あなたの中で……」
「ダーメ。コンドーム持ってないもん。そんなことしちゃったらどうなると思う?」
「でも――」
「でもじゃないでしょ。今日は手だけ。エッチは無し」
「そんな、せめて――」
「せめて?」
そのかわいらしい口でしゃぶって欲しい。そう言いかけて、七海は止めた。もう十分辱めを受けている。呪霊の攻撃のせいとはいえ、普段では考えられない痴態を晒してしまった。きっと呆れているだろう。
「いえ、なんでもありません……」
「呪いのせいでつらいね。こんなになっちゃったのは七海のせいじゃないからね。私がドジで転んじゃったから……。さっきみたいにビュッビュッて、いっぱい出していいよ。私の手で気持ちよくしてあげる」
彼女の手が七海の股間に伸び、七海のペニスを弄ぶ。
「あっ、も、出るッ……!」
尻への刺激で限界まで高められた吐精感は凄まじく、手淫によって呆気なく射精した。既に何度か出してしまっているせいで勢いは乏しく、尿道口からダラリと精液があふれ出てきた。プリプリと張りのある亀頭を伝い流れる粘液を彼女が指ですくって手に付け、竿になすりつけて優しく愛撫を始めた。射精後のペニスは非常に敏感だ。ちょっとした刺激にも過敏に反応してしまい、七海は首を反らして呻き声をあげた。
「わあ、まだこんなに出るんだ……。すごい。七海って本当にえっちだね」
「違う、あの呪霊のせいで――」
「まだまだ勃起、おさまらないみたい。次は何して欲しい? 正直に言えたらしてあげる」
彼女が横たわる七海の隣にきて、そっと添い寝をした。慰めるように七海の胸元に手を添え、大丈夫だよと穏やかな声で語り掛けながら静かに言葉を待つ。体中が敏感になっているいま、肌をなぞられるだけで皮膚がぞわぞわと粟立ち、腰が震えた。何をして欲しいか。そんなこと、決まっている。
「はぁ、クソッ! イキたいッ! アナタの手で扱いてイカせてください!」
「いいよ。いっぱい出してね」
半ばやけくそになった七海が不服そうに吐き捨てた。耳まで真っ赤にして腕で顔を隠している様子がいじらしく、七海なりの素直なおねだりを叶えてやらねばなるまい。もうどうにでもなれと、七海は四肢をなげうってベッドに脱力した。彼女は隣で寝ころんだまま頭をもたげ、胸元に唇を寄せた。今日は特別サービスだ。七海の乳輪は色素が薄く、乳首もピンクで体格からみたら控えめな大きさをしている。肌を露出させているので冷えるせいか、それとも興奮のせいか、今日は普段より赤みが強くなっているようで、触ってくれと主張しているように見えた。乳輪を舌でくるりと舐め押すと、突然のことに驚いたのか七海はビクンと身体を跳ねさせた。やめろとは言わないのでそのまま胸の真ん中にピンと立つ乳首を舌全体で押し潰す。小さな声を漏らして喘いで悦び、されるがままになっている。そのまま桃色の突起を可愛がりながらペニスを扱いて、七海の望み通り射精へと導く。竿はリズムよく扱いてやり、亀頭はくびれを意識しながら強弱をつけて揉むように触る。七海の息遣いが荒くなってくるのを確認し、乳首を舌でつつきながらペニスを一定の速度で擦り続ける。
「あァ、もう、イく! 出るッ! でるでる! あーッ! でる! でたッ! ハーッ、でてる……、ああ、クソっ」
鈴口から垂れる精液を手に取り眺めてみる。射精の勢いは無くなってきたが、量はまだまだたっぷりと出ていた。普段は一回戦を終えるとすぐ床についてしまうくせに、今日は萎えることなく天を仰いでいる。
「スッキリした? もう帰れる?」
彼女は我ながら意地悪な聞き方をしていると思いながらも、言わずにはいられなかった。七海の淫猥な姿に嗜虐心が煽られる。追い詰められた七海は、なんと返すだろう。
「もう少し、辛いです……」
明らかな欲を孕んだ瞳が彼女を見つめた。節くれ立った男の手に、彼女の小さく柔らかな手のひらが包まれる。そのままこけた頬へと誘われ、二人は向き合った。
「ほんとかなぁ。もう呪い、解けてるんじゃない?」
彼女が作られたような妖艶な笑みを携えて言った。
「いえ、まだなんです。もっと、してください……」
七海もまた、とってつけたように眉を顰めて言った。
今夜の出来事が二人の未来を変えるだろうか。本当の自分を真に理解したとき、新たな扉が開くのだ。